前提:記録を書く目的と記録の役割が明確になっていることが必要
見たままを記入する、単なる”介護日記”であるならば、特に観察スキルはなくてもよい
今回は、目的のある”介護記録”に関して、観察スキルとの関係を書いていきます。
先に結論です。
結論:観察スキルが向上することによって、介護記録の質が高まります。

観察と記録ってそんなに関係があるの?記録って大切なの?

お医者さんのカルテや看護師さん達の看護記録、私達リハビリテーション記録と同じように介護記録も凄く大切なんです。
特に私達のように一日の限られた時間しか関われない職種にとって、引き継ぎしながら24時間を続けて関わる介護記録は、対象者の生活を左右する非常に貴重な情報源なんです。

ふ~ん。じゃぁ詳しく教えてよ。
最近は、自動入力できるアプリを使っている事業所も増えていますが、記録の内容を説明したいので、あえて全文入力または手書きを想定して進めていきます。
理由:そもそも介護保険の目的は”自立支援”
自立を目指すとは
全てを一人でできるようにすることではなく、それぞれの対象者が小さなことでも、何かできる部分を見つけることです。
- 時間に見合った挨拶をする
- 味見ができる
- 場にいることができる
など、些細な目標に見えても対象者にとって有益であれば、”自立”を目指していると言えます。
過度な介護を減らし、”自立”を目指すことは、目的を持った関わりとなる
それぞれの”自立”を達成するためには、介護の目的を明確にした観察スキルが必要となります。
介護保険で記録に求めていること
介護保険が”自立支援”であることは先程書きましたが、そのために求められていることは、主に次のような内容です。
- 対象者の生活状況や介護を必要とする判断材料を集めていくデータ
- 対象者が介護保険を利用して有益な生活を送っている証拠
- 職員同士の情報共有
- 事故発生時などの状況説明と証拠
細かくすれば、他にもありますが、この4つが大きなところと言えると思います。
そこで、次は介護記録の書き方についても触れていきます。
介護記録の書き方の説明は、意外と曖昧
介護記録の記載方法も、基本的には5W1Hという他の職種と同じような形式を用いています。
5Wとは・・・次の5つです。
- (誰が)
- いつ
- どこで
- なにを
- なぜ
そして、1Hとは、
- どのように
と、なります。
これらを組み合わせると、次のような文章例ができあがります。
対象者が、14時のフロア活動に参加した。活動後は食事をする座席で水分補給のお茶をゆっくりと飲んでお部屋に歩いて戻っていった。
割と見慣れた書き方でしょうか?
もう一つ、介護で直接関わった状況の文章例を書いてみます。
14時にナースコールがなり、お部屋に伺うと『ベッドから起きたい』との訴えがあった。
「分かりました」と伝えて、起き上がりと車イスへの乗り移り介助を行った。
『ありがとう』と言って部屋から出ていった。
こちらも、それほど違和感なく読める内容かもしれません。
2つとも記録の書き方を説明している中で、必ず指摘される主観と客観はできるだけ分けて書かれているので、そのまま記録として残されていても問題視されることは少ない書き方です。
せいぜい、主観的な表現は上の文章の”ゆっくりと飲んで”のあたりでしょうか。
ただ、今回のテーマになっている【観察】と【記録の書き方】に焦点を当てた場合には、やや目的と情報が分かりにくくなっています。
2つの文章で曖昧な点は、”何の為に書いているのか分からない”こと
1つ目の文章で、得られる情報は次のとおりです。
- フロア活動に参加できた
- 自分の食事の席に座ることができた
- お茶が飲めた
- 一人で歩くことができた
- 自分の部屋に戻ることができた
確かに、これだけでも情報量は多いように見えます。
しかし、普段からこれらの行動が見られているのであれば、毎回同じことが同じようにできているだけで珍しい事でもなんでもありません。
小タイトルの通り”何の情報を伝えたい”か分かりません。
繰り返し大切なこと:”介護日記”なら、このままで充分。
上の文章が”介護日記”であるならば、特に問題はありません。
また、記録する時間や分析する時間が沢山あるのであれば、そのままの書き方で定期的に開催される「モニタリング」という介護実績の振り返りで時間をかけて分析するのも悪いことではありません。(ちょっと時間が勿体ない気がしますが・・・)
伝えたい情報と目的を明確にする

別に”記録”として成り立つなら、いいんじゃないの?

全く「ダメ」とは言いません。しかし、目的をハッキリさせると書き方を変えられる例を次に書いてみます。
例えば、”活動に最初から最後まで参加する”事が目的だったら、次のように書けば簡単ではありませんか?
14時~15時のフロア活動に最初から最後まで参加した。

お茶を飲むことと、ご自分の食事の席や居室への移動が普段から「できている」事であれば、この一行の記録でも、”場に居続ける”目的を達成しているという情報が伝わります。
観察を意識することによる記録の変化

つまり、観察の目的ってのは、介護として関わる点がどこなのかを整理するってことなのか。

そうです。
もちろん、他にも目的はありますが、介護記録を書く目的が観察目的と一致すると記録を簡潔にすることができます。
事前の情報や、関わり続ける中で得られた新しい情報を整理していくと観察するべきポイントが絞られます。
このポイントを絞ることが目的を作って観察するコツなんです。
目的をハッキリさせると、目的ごとに観察した内容を分類することができます。
そうすると、”介護が必要な部分”に関する分析もしやすくなります。

介護が必要な部分を把握すると、
対象者の生活全体を見通す助けにもなります。
観察スキルが向上することで得られるメリット
観察する目的をハッキリさせていくと徐々に観察スキルが向上していきます。
そこで得られるメリットは、次のとおりです。
- 場面ごとの目的設定が早くできる
→ 伝えるべき、残すべき内容の取捨選択がしやすくなる。
- 一度に複数の目的を持って関わりを持つことができるようになる
→ 記録が充実する
- プランの見直しをする際に不必要な介護業務を減らせる可能性が高くなる
→ 余計な記録時間を削減できる
まとめ
目的をはっきりすることができる【観察スキル】を磨いていくと”介護記録”に記載する内容と記録に必要な時間を減らることができる
【観察】など技能に関する記事として、お時間をいただければこちらもお願いします。
ケアプランに関して、こちらもよろしくお願いします。
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