前提:介護保険のざっくりした基本
介護保険サービスを受ける事の出来る人
介護保険サービスの対象者(被保険者)は以下の方です。
第1号被保険者・・・65歳以上の方
第2号被保険者・・・40歳~64歳の方で特定疾患の診断を受けた方
特定疾患の種類は16種類あります。詳細は厚生労働省の
「特定疾病の選定基準の考え方」を参考にして下さい。
本題:『ケアプラン』とは、介護保険サービスを適切に受ける為の設計図
【具体的な介護サービス内容】の書き方一つで、利用者・ご家族の生活や介護職員の業務の内容は大きく変化します。
介護認定の申請手続き方法
病気やケガなどで介護保険サービスを利用する事になったら、住所地の市町村役場の窓口で「要介護認定」の申込みを行います。
詳しい申込み方法や申請から認定結果通知と介護保険証交付までは
LIFLLU介護 さんの「要介護認定の申請方法」を参考にして下さい。
介護保険サービスを受ける為にケアプランを作成する
ケアプランを作成する為に依頼を受けた
「介護支援専門員(ケアマネージャー:以下ケアマネに略します)」が
認定された介護度から必要なサービスを選択する為にご本人の体調や生活状況を確認する為に被保険者となった方の所に訪問し聞き取りを行います。
※
その後作成される7枚の書類が『ケアプラン』です。
7枚の中には、
- 本人・家族の希望
- 総合的な援助方針
- 利用者の課題(ニーズ)
- 長期・短期目標
- 課題改善に向けた具体的なサービス内容
- 1週間のタイムスケジュール
- 月間予定表
- 利用予定料金
等が記載されています。また、この中には在宅での福祉用具のレンタルなども含まれます。
誰が・どこで・どんなタイミングで・どのような内容の援助・を受けるのか・・・
援助を受ける結果、どのような状態になることを目指しているのかを
どの位の期間続けるのか が分かるように出来ています。
ケアプラン作成の留意点
ケアプランは誰でも作ることが出来る
ケアプラン作成の一部を介護員が実施する施設や事業所もあります。
居宅サービスという自宅で受ける介護サービスのプランを家族が作成することも可能ですが、役所への届け出や会議開催の通知、サービスを受けた実績と料金計算など、やることが盛り沢山です。
ケアプランの3~5は介護員さんが作成している施設や事業所も少なくない。
特に課題改善に向けた具体的なサービス内容 は、「現場の状況を把握できていないケアマネに作られると困る。」との意見で積極的に介護員さんが作成してケアマネが最終チェックとサインを行っているところもあります。
最前線の意見が反映されやすいというメリットがあります。
※
一方でデメリットとして、少ない介護員が作成している時間帯はフロアの職員数が益々減ってしまい転倒事故などのリスクが増加する。
という意見もあります。また、詳しい理由は分かりませんが、定時後に作成しているにも関わらず「サービス残業」となっている施設や事業所は数えきれません。
「誰が作ったのか」よりも
「サービス内容」の方が重要です。
(個人的には、工夫をしていたとしてもフロア人員を減らすリスクは避けるべきと思いますし、ケアマネが現場を把握できないプランとは話しにならないような気がします。)
誰の為の書類かを見つめ直す
『ケアプラン』は被介護者が介護サービスを適切に受ける為のものです。
同時にサービス提供者が適切な援助を行う為の指針でもあります。
利用者と家族が理解しやすく、サービス提供者が実行しやすいものが必要となります。
分かりやすく簡潔なものであるべきです。
利用者や家族の希望に関する記事も書いています。
よろしければ、こちらも読んでみてください。
”具体的”とはどんなものか
ケアプランの書き方や記載内容はケアマネごとに違います。
利用者の”出来ること”を「見守る」というプランを細やかに書き込む人もいれば、
”援助”のみを簡潔に記載する人もいます。
どちらが正解と言うことはありません。ただ、
「出来るところを見守りのもとで行っていただき、出来ない部分を介助する」
(実際に勤務したことのある、ある施設でのほぼ原文です)
「え!!??」ってなりませんか?
批判するつもりはありませんが、その時には思わず「これで大丈夫なんですか?」と聞いてしまいました。
(その場の介護員さんやケアマネさんから「何言ってんのコイツ」という目線をいただきました)
※ちょっとだけ補足すると、アセスメントで抽出した課題に優先順位をつけて、最低限の介助~見守りなど段階付けをしたのであれば、表現方法として内容が変わってくるかもしれないという例です。
また、別の所ではベッドから起きる時の
靴の置き場所
- 車イスの設置場所と援助者の立ち位置
- 掛け布団の後始末
等が細かくびっしりと書き込まれたものもありました。
【具体的な介護サービス内容】と項目付けされているのであれば、記載されるのは
簡単に分かりやすく書かれるべきです。
加えて、介助方法が安全に行うことが出来ない「スキル・技術」や「経験」が不足していると言われるような職員さんに対してプラン紙面で技術を強要しても向上は見込めません。きちんと別に時間を確保して共に習得を目指すべきです。
(変なところで技術を盗め的な職人気質体制が残っていることも問題ですね)
技術と技能の指導や習得に関しては、こちらも合わせて御覧ください。
ちょっと逸れますが、介護士の感じる【孤独】として、
「技術と技能」の面から”斜め”に捉えてみた記事です。
よろしければ、読んでみてください。
課題解決(ニーズ)に重点を置くと記載内容は簡潔に分かりやすく書きやすい
「要介護の高齢者は維持が大変」という考えから、”出来ること”を続けていくプランが必要と判断する事がしばしばあります。
ある面では事実だと思いますが、その考えの基にプランを作っていけば内容は徐々に増えていきます。
サービス内容を記載する用紙には、
「解決すべき生活全般の課題(ニーズ)」という
項目があります。
この欄に記載されている「生活全般」は生活様式全てを長々と書き出すもので無くても問題ありませんし、一枚目のような総合方針が書かれていると必然的にサービス内容もおかしな事になってしまいます。
「ケアプラン作成時に上手く纏めるケアマネの共通点」はこちらを
読んでみてください。
もし、生活全般を長く書いた方が書きやすくても、
続く”長期目標”と”短期目標”で区切りと優先順位をはっきりすれば簡潔に書くことはいくらでも可能です。
自立を獲得する場合も維持を図る場合も、身体的な介助も認知症等の介護も課題を解決するための援助・指導・工夫に集約すれば、おのずとケアプランは見やすく簡潔なものになります。
生活全般に介助を行う必要がある時には優先順位をつける際に緊急度の高い事から関わり方や援助方法、介助方法を検討していけば自然と段階分けされていきます。
必要な時に必要な分だけ介助を行うことは利用者の自立支援の意味でも、介護職員の無駄に増える業務負担の軽減を図る意味でも重要なことです。
適切な介助や援助とは、ただ寄り添ってお手伝いをする事ではありません。
人対人の関係で成立します。認知症の症状が進行した人も寝たきりで意思表示が難しい人も同じです。
まとめ
- 解決すべき課題と目標、具体的なサービス内容は簡潔に記載する
- 具体的なサービス内容は援助や介助の関わる部分を分かりやすく記載する
- 分かりやすくすることと細かく記載することを混同しない
- 簡潔なプランに対応するように記録内容も整備して余計な業務負担を減らす
- 介助や関わり方を工夫することで無駄な介護業務を減らし利用者との関わる質の向上を目指す
以上、今回はとても長くなりましたが
『ケアプラン』の【具体的な介護サービス内容】に関する
”斜め”な一案でした。
この記事で少しでも”気持ち”が「軽く」なっていただければ幸いです。
※ いらすとや さんから借用しました。
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