新人教育や後輩育成では、先輩が後輩の【背中を観察】して指導する
介護現場での新人教育や後輩指導で陥りがちな「前に教えたよね!?」は指導方法を工夫する第1歩
忙しいと感じる時こそ指導方法を見直してみる
意外と多い「詰め込み教育」や「技術を盗む職人気質」の指導方法
介護現場での新人研修や転職、異動してきた後輩職員への教育研修では、殆どの施設・事業所で
- 使用しているケアアセスメントの説明
- 一般業務内容(記録方法やタイムスケジュール、備品管理など)
- 利用者情報 等
を一通り説明し、1~2週間業務を指導者と一緒に行っていくのが一般的と思います。
- 「何か分からないところはない?」
- 「これからも分からない事があった時はいつでも聞いて」
などの先輩や指導職員さんのセリフ後は大概、指導者から離れての現場業務に配属されていきます。
その後は、徐々に夜勤を行うなど業務が増えていきます。基本的な介護技術は初任者研修や各種専修学校で習得している方もいるので、それほど変な流れではないかもしれません。
最近はOJT導入との言葉を用いている施設・事業所もありますが基本的に介護現場では先輩職員が業務と並行して指導することが多くあります。
しかし、実質には言葉だけの”OJT”となっている所も少なくありません。
「あれは、こうすればいいんだよ」と一方的な指導が急に行われたり、質問しても「以前教えた」「自分で考えてみろ」と”技術は盗め”とばかりに距離を離されてしまうこともあります。
実際、利用者の介護依存度や重度な利用者の増えているためか、直接的に利用者さんに対応が必要な時間が年々増えて”質疑応答”や”アドバイス”の時間確保は大変になっています。
説明が上手く通じていないイメージ ※いらすとや さんより借用
「技術を盗む・体で覚える」は後輩が盗むばかりではない
「先輩の背中を見て技術を盗む」というと
職人気質で高度な専門的技術を身につけることが出来そうな気分になります。
しかし、技術を盗まれた先輩職員は「技術者が増える」とただ喜んでばかりはいられません。
後輩が誤った解釈で技術を習得し活用していた場合、最悪の結果を招く危険性も出てしまいます。
そうならない為には、やはり先輩職員側も配慮が必要になります。
自分の技術を真似て介護を行っている後輩が誤った習得や活用をしていないかどうかを先輩側も後輩の様子を”盗み見て”状態を把握する必要があります。
様々な要因で業務が忙しくなり、指導以上の質問に返答できなくなりそうな時ほど後輩が業務を覚えているかどうかを把握する必要が出てきます。
※ いらすとや さんより借用
指導する側の意志が与える影響は想像しているよりも大きい
何を目的において指導するかで指導方法は自然と変化していく
介護施設・事業所が非常に多忙な事や万年人手不足なのはあきらかです。
サービス残業も日常の中で新人指導に時間を当てることは更に業務中の人手不足を加速させます。
しかし、「一日も早く育って欲しい」との思いだけで指導を行っていくと前述したような危険を隠した状態での業務になってしまう恐れがあります。
業務を覚えるだけでなく、「半年から一年後にここまでを任せることが出来る職員を育成する」などの時間単位での目標を立てるだけでも指導方法や指導と実践後の振り返り、フィードバックなどの方法や内容・言葉のかけ方は変わってきます。
他社に引き抜きをさせたくなるほどの人材を育てる
私個人が以前勤めていた職場で、フロアの介護リーダーと共同で立てた目標です。
後輩の療法士や学生の実習指導を行う際にも同様に意識するように心がけています。
指導の際に行っていることは、
- 目標の確認
- 本人の判断内容や基準としたことを聞く
- 私が説明した内容をどのように解釈したのかを本人の言葉で説明してもらう
- 次回までの課題や実施したいこと疑問点などの共有化
他にも細々とありますが、これらを大きな柱として行っています。
他にも介助方法を介護員さんに伝える際にも同様の事を心がけて行っています。
自身の思考や技術が伝わると少し変わるかもしれません。
言葉での解釈共有の次に行うこと
いくら言葉を柔らかく、分かりやすいようにと苦心しても伝わりきらないことは多くあります。
その際には、指導後や業務中の新人や後輩の背中を見てみます。
自然体にピンとしていれば比較的自信を持っているのかもしれない。
逆に背中を丸くしたり張り詰めたように背筋を伸ばしすぎていたら、もしかしたら業務や何かに不安や緊張があるのかもしれない。
との予測で観察しています。
対話中の目線の動きも「目は口ほどにものを」言ってくれる時もあります。
直接話しにくそうな時には他の職員さんに協力を要請することも有効です。
自身の指導力が不足していると思われても、新人や後輩の職員の教育が一段階ステップアップが目的とすれば「医師で言うところの”トリアージ”だよ」など嘯いていれば気にならなくなるかもしれません。
指導される側の職員さんも先輩の背中をみてみる
最近は、同業の転職などにとどまらず定年された方や他業種から転職された方も増えているようです。
新卒の職員さん以上に”学ぶ”ことと”習得”することが大変な場合もあるようです。
また、「自分は過去、これだけの実績を作ってきた」と態度を示して先輩を蔑ろにしてしまうことも無意識に出てしまう新人職員さんもいるかもしれません。
実際、私自身も転職直後に「以前の職場で行っていた方法やシステムは非常に効率が良いものだった。ここはなんて非効率的なことをしているんだ」という考えが無意識に態度に出てしまい、新しい職場としての先輩職員さんや利用者さんにかなりの迷惑をかけてしまいました。
例え、同業転職で仮に学会で功績を残した人でも転職直後は新人です。
経営立て直しなどの、特殊な環境や状況でない限り新しい職場の基本をしっかり把握する必要があります。
利用者さんに介助するときも相手を評価し、どんな人なのかやどんな介護を必要としているか情報収集するのですから、過去の実績は一度引き出しにストックして新人として気持ちを切り替えてください。
まとめ
- 新人や後輩の職員指導・育成は指導する先輩の方が積極的に相手の言葉に耳を傾け、背中の状態や挙動を盗み見て指導方法や内容が合っているのかを検討する。
- 両者の目標や不安点が共有できると指導方法も徐々に見合った内容に変化していく。
- 「以前も説明したはず」と言いたくなる時こそが、指導方法や目標共有がズレているタイミングと捉えてみる。
- 必要があれば指導を同僚にパスしてみてゴールを狙ってみる。
- 後輩職員側も目的意識共有の意識を持つ
以上、今回の”斜め”な目線からの一案でした。
少しでも”気持ち”が「軽く」なっていただければ幸いです。
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